1、日程   2004年 10月 13日(月)    単独

2、行程   
     12日   23時30分 道の駅 奥飛騨温泉郷上宝 着 車中泊

     13日   5時起床、5時20分出発−(車)-40分新穂高ロープーウェイ乗り場−(車)-6時40分 沢渡駐車場 
           7時20分−(バス)−50分 上高地BT
     [登り]  8時10分- 30分西穂登山道入口 −10時15分着西穂山荘30分発−11時40分着西穂独標 

     [降り]  11時55分発−12時45分着 西穂山荘 13時10分発−14時45分登山道入口−15時10分上高地BT 
           15時20分発-(バス)-15時50分 駐車場  16時発 −(車) 21時帰宅

ビビりの初登山・・・一度で経験値がかなり上がった?



以前から、出張等で遠出の仕事が入った場合は帰りに山に登ってみようと思ってたところ、金沢市まで行く予定が入った。
登山初心者、しかも初登山の自分でも登れそうな山を探して、ロープーウェイで行ける西穂独標に決めた。

ところが、4日前に雨の中滑って転んで左腕を骨折してしまい(詳細は面倒なので、ヒビのようなものとしておきます)、
仕事は自分が行かなければならない為、とりあえずダメ元で山登り用の道具を積み込んで出発。
オートマなので運転は何とかできるものの重いものは当然持てない。両手を使うような登りなら無理だろうから、ロープーウェイでも乗って気分だけでも味わって降りてくればいいんじゃないかな・・・ってなもんで。

道具といっても、登山など続けられるかわからないので、値が張る靴やザックなどはリサイクルショップやフリマなどで調達したもの。
続けられそうならちゃんとしたものを買おう。

ザック:ローアルパイン50g(新品フリマ4000円)、靴:ホーキンス ゴア製(フリマ2000円) 衣類:上下カッパ(作業着用ビニール製3000円)、フリース、スキー用タイツ、Tシャツ2枚、ベスト、下着、靴下

食糧:コンビニ おにぎり3個、パン2個、飴等、ウィダーイン2個、菓子類、
水分:水500x1、アクエリアスx2
その他:カメラ、滑り止め付き軍手、ヘッドランプ、ストックx1、ウェストバック、電池、ライター、薬、タオル、ザックカバー、筆記用具、ガイドブック

ウエアーは普段着代用のナンチャッテ登山者。
カーゴパンツ、長そでTシャツ、半そでTシャツ、フリース上、薄いヤッケ(ヘリ―ハンセン)、キャップ



さて

道の駅で仮眠して、朝起きてすぐに着替えて準備を済ませ、新穂高ロープーウェイ乗り場に向い駐車場に停め、・・
さあ、靴(初試し)を履こう・・・・・  
  あれっ?靴がない。何で???    どうやら金沢に置いてきてしまったらしい。

今持ってるのは底がペロンペロンでスリッパみたいなスニーカー。

とりあえず荷物を置いたまま切符売り場まで行ってみると、まだ朝早いため観光客っぽい人はほとんどいないが、大勢の登山客が並んで待ってる。
皆さんそれなりな格好で、ハイキング程度の荷物の方でも靴だけはしっかりしている。

初登山なので、この靴ではなんか場違いっぽくて恥ずかしい。腕も骨折してギプスをはめてるし、なんか気おくれしてるし、
わざわざ往復券(2800円)買っても歩かないで降りてくるだけならもったいないし。
今回は行くな・・ということかもしれない。やっぱやめよう。

帰り道運転中、情けないやらおもしろくないやら、とりあえずせっかくなので行ったことがない上高地に行ってみようと思う。
河童橋あたりの散策だけでもいいし、ガイドブックではあまりポピュラーではないが西穂山荘までの登山道もあるから,、登山道見学でもいいかな、ぐらいの気持ちでまずは沢渡地区へ。

適当な駐車場に停め、出てきた管理人さんに駐車場代1000円と上高地までのバス往復券代1800円を支払い、たまたますぐに来たバスに乗り換え上高地へ。
乗客は少なく、みんなハイキングスタイル。観光バスに乗って遠足に行くような気分で久しぶりになんとなくワクワクしてしまう。

釜トンネルを抜けてからの天気はあまり良いとはいえず、山の上のほうは曇ってるようだ。

30分位でBT(バスターミナル)に着いたが、朝一番じゃないためか、他にもバスが結構停まってた。
さすが上高地、平日でもかなりの観光客が来るようだ。

荷物を整理してから、用をたしたり周辺をうろうろしたあと、梓川沿いに戻り田代橋を渡ると、BTから20分位で西穂登山口に到着。
BT周辺や遊歩道には、あまり天気がよくないにもかかわらず朝から散策や写真撮影で結構な人がいた。
  

西穂登山口は写真で見たとおりしっかりした門があり、そこから見える道ははっきりしててなだらかっぽい。
これなら初登山者でも平気かも、と勝手に思う。行けるところまで行ってみるか。(甘かった)
   

登山届を出すポストがあるが、用紙が一枚もない。書いたこともないし、まあ行けるところまでだからいいか、ってなもんで届け出なしで出発進行。(絶対いけません。反省)

はじめはなだらかな山道で、左手に沢の音を聞きながら、赤いリボンがついてる為迷いそうもなく、気分良く歩いていく。
しかし、20分位歩いても誰もいない。今のところ道はわかりやすいしそれほど急ではない。左手でストックを握ると痛みがあり突けないが、まだ全然OK。もう少し行ってみよう。

山の中で一人というのは初めてだからかもしれないが、だんだんビビリ始める。熊がいるんじゃないか。道に迷うんじゃないか。
とりあえず踏み跡はしっかりしてるし、赤いリボンを確認しながら歩く。

少しすると、上から熊鈴をジャラジャラ鳴らしながら、年配の男性が一人降りてきた。人工的な音が聞こえただけでほっとする。
挨拶すると、後から奥さんが降りてくるとのこと。ペースが違うらしい。  
えっ、それでも何で別々に降りてくるんだ? 
その後10分位で奥さんらしき女性が降りてきた。「主人何分位前にすれちがいましたか?」とのこと。
山歩きってそんなものなの?

高齢の女性が一人で歩いてる。なんか上まで行けそうな気になった。頑張ろう!

だんだん道が急になり、また少しすると中年の男性が一人降りてきた。自分では山荘まで半分位歩いたつもりが、「山荘まであと2時間位じゃない」とのことでガックリ。

その後30分位誰も合わないで、霧のなか薄暗い山道を登ってると、足もとにまだ踏まれていない動物の糞が。
近くになにかいそうな気がして足早になる。ストックを岩にガツガツ音させてぶつけながら、何だかわからない掛声を「ファイットゥ」、「イッチニイッチニ」とか適当にかけながら登っていく。

帰ったら、絶対熊鈴を買おう!

休憩はあまり立ち止まりたくないので、がんばって登ってしまう。歩きながら水分補給したり、飴をなめながら歩く。
途中一度だけザックを降ろして、物音にビビりながらも10分位座って休んだ。

道は急だが岩場ではないので、木の幹につかまって登るとき位しか手は使わないので、何とかなっている。
やはり、というか当然結構疲れるし、森の中一人でいることが怖い。
山登りってこういうものなの? みんな何でこんな思いしてまで山登るの? 何が楽しいの?疑問を感じてしまう。

一応、上に登れば営業してる山小屋があると思えるから頑張れるんだけど・・
   

途中、「宝水」の表示がある水場があり、藪をかき分けのぞいてみるが、慣れてないためか飲んでみようとは思えなかった。

またやっと一人降りてきた。山荘まであと30分くらいとのこと。「今からなら独標までならなんとか行ってこれるんじゃない」と言われるが、ここまででもかなり疲れている上に、骨折してるし、スニーカーだし、夕方にまたこの道を帰るなんて想像がつかない。

山荘の発電機の音が聞こえてきたときは正直ほっとした。
山荘に着いた時はいきなり人がたくさんいてうれしかったが、またこの道で戻らなきゃいけないのか、と考えると憂鬱で、達成感もなにもなかった。初山登り失敗か?

ペースがわからないためコースタイム3時間30分のところを2時間位で登ってきてしまったのだから当然相当疲れてしまった。

山荘から上も、雨は降ってないが霧がかかっており、山荘前も霞んで景色は全く見えない。
それでも山荘前のテラスはロープーウェイで来たと思われる(絶対そうに決まってる)多くの登山客が休憩していた。
中高年者が多く、しかも女性が多い。・・・・自分も含めて中高年登山ブーム!!            

  

とりあえず休憩。外のテラスでおにぎりやパンなどを軽く食べてから、せっかくなので山荘に入ってコーヒー(500円)を注文し、飲みながらこのあとどうしようか考える。

登ってきたばかりだけど、帰り道どうしよう? 
今登ってきた、まったく誰もいなそうなこの道を降りるか、ロープーウェイ経由で帰ろうか迷う。山荘の人に新穂高から沢渡までのバスを聞いてみるが、途中平湯で乗り換えるため結構時間がかかりそうだ。
それに、帰りのバスの乗車券も買っちゃってあるから、もったいないし・・・

それもそうだけど、 せっかくだから、ここまで来たからには独標までは登ってみようか・・・・・。
ガイドブックでは独標まで往復2時間30分になっているが、これからは岩が多くなり、霧で濡れて滑るところにペロンペロンのスニーカーだ。それに骨折してる腕で行けるだろうか?やっぱりどうしよう?

霧の中、今から独標方面に登って行く人は結構いる。
ロープーウェイの最終が15時頃だということで、今から独標まで往復して乗り場まで降りればなんとか間に合いそうだけど・・・

とりあえず周りの人たちの話に聞き耳をたてると、
自分よりかなり年配でやたら元気な関西弁のおばちゃんグループも、これから独標まで登ってくるらしい。

こんなに人がたくさんいると心強くなってきた。また行けるところまで行ってみよう・・っと。

おにぎりりと菓子パンで軽く食事をし、独標方面に登り始める。
山荘の前は傾斜がある岩場を少しだけ登るが、霧のため濡れて滑りやすく、左手が使えれば楽そうで、この先が思いやられる。

ここから上はあまり高い木はなく、晴れてれば景色がよさそうなルートのようだが、霧で何も見えない。
時々、一瞬だが霧の切れ間から上高地側が望めることがあり、残念でならない。

丸山の手前までは、それほど傾斜はないが、低い灌木帯のせまい道を登っていく。
岩は少ないので比較的楽で早足になる。
丸山の手前の岩場は急ということはないが、靴が不安な分、両手を使う場所があり、左手で少し支えてみるが痛くて力が入らない。
霧で下が見えず高度感がないためか、あまり恐怖を感じないでなんとか登ることができた。

この岩場のあたりで、先にいっていた関西弁のおばちゃんグループがへロヘロになってて、「疲れた。もう無理や」 とか何とか言いながら戻っていってしまった。
   

丸山から独標手前までは、傾斜はあるが、手を使う程ではない位の岩の道を登っていく。
丸山までぼちぼち居た登山者は、大半の方は戻ったらしく、いつのまにか全然少なくなってる。
霧の中から見えた独標は岩だらけで、今の自分の状態ではとても登れそうにない。落ちたら死にそうだし、登ったら戻ってこれるの?

独標手前の岩場まで来てみると、少し上に登ってる方が一人いるので、とにかく登り始めてみる。
スニーカーはやはり滑る。ちゃんとした登山靴なら問題ないんだろうか? 技術、経験の問題? わからないからしょうがない。
滑るので左手も無理に使ってしまう。
恐怖でずっと心臓がバクバクしながらも、へっぴり腰で這うようになんとか独標のてっぺんに到着。

てっぺんは岩だらけだが10人位が立てそうなスペースがあって、4人の方が休憩していた。
霧でまわりは何も見えない。
高度感はわからないが、踏み外して落ちたら助からないかも。

独標から先、西穂高岳までは一般の登山道だということだけど、いったん下ったすぐ先に、霧の中すごく急な岩場の登りが見える。
この先どこを降りてどうやって行けってんだろう?

一応降り口から先に印があるが、怖くて立ったまま下をのぞけない。
四つん這いになって見てみると、後ろ向きで三点支持で降りていくようだ。
しかも一歩間違えただけで・・・落ちる!!!ヤバイ!!    これが一般道???
     

独標のてっぺんでは、先客の方に写真を撮ってもらったりして15分位休憩したけど全然霧が晴れない。
   写真には、白いスニーカーと、左手のそで口からのぞくギプスが・・・痛々しく・・・(自分で言うな!)
帰り道の岩場のことや、山荘からのルートのことを考えると早く降りたいので、さっさと荷物を片づけて戻ることに。

降りはじめの岩場は、後ろ向きになったり、尻をついたりしながら、ゆっくり降りるが、左手に力が入らないので結構怖い思いを。
あとはそれほど傾斜がないので、滑らないように気をつけながらも、なんとなく急ぎ足に・・
登りの大変さがうそのように、下りって全然楽なんだ・・・・・とこのときは思った。

余裕がでてきたので、写真を撮りながら降り、50分位で山荘に着いた。

 

山荘に着いた時は、さすがに朝から歩きづめなので相当疲れてクタクタ。
こんな状態で、また上高地までの誰もいない薄暗い長い道を戻るのか?  歩けるのか? 心配だ。

それともほかの人たちと同じように、乗り場まで1時間歩いてロープーウェイ経由でバス乗り継いで帰ろうか?

テラスで休憩しながら見てても、みんなロープーウェイ側へ降りていく、上高地方面に向かう人は一人もいない。

自分の後から来る人なんていなそうだ。もし途中疲れて動けなくなったら、道に迷ったら、怪我したら、熊が出たら、
最後尾だと誰も助けてくれないじゃん。
それに、この時間だとすれ違う人もいないんじゃないかな。

体力に余裕があって、しかも天気が良くて明るければこんなに悩むことはないだろう。

誰か! 勇気と元気をください!!!

薄暗い森の入り口を、ただじっと見つめててもどうしょうもないので、腹をくくる・・・しかなさそう。
甘いものを食べ、水分をしっかり摂り、飴をたくさんポケットにいれて、上高地側の森の中に足を踏み入れる。
途中まで降りてしまったら、登って山荘に戻るのはもう疲れて無理だろう。
とにかく、滑らないように、またストックで音をたて、掛声かけながら降る。

周りの笹藪でザザーとか物音がする度ビクビクしながら、どんどん降る。
しかしそれにしても、山荘から上のにぎやかさとこの道とのギャップは何なんだ。

「宝水」を過ぎ、急な山道を降っていくが、登りほどは辛くない。
普段、時々体を使ってるおかげか、腿はパンパンだけど膝の痛みはまだ大丈夫そうだ。助かる。このままもってください。

途中、たった一人だけ中年の男性にすれ違った。
誰もいないと思って、「おーい誰かいないかー」「山んなかオレひとりかー」「クマ来るなー」とか何だか訳わかんないことをでっかい声出しながら下ってたら、すぐ近くに、静かに黙々と登ってくる人があらわれた。
嬉しかったけど、「うるさくてすいません、遭難したわけじゃありませんから・・。誰かいると思わなかったので」・・・なんて・・みっともないし、はずかしい。
その方は、にやにやしながら、挨拶だけでまた黙々と登って行ってしまった。(逃げるように・・・だったかも)

でも、平日この時間(14時30分頃)に登っていく人がいるんだ。
山荘泊まり?テント? ビビりなんて全然感じない。というより、「ビビる・・何それ」って感じ。きっとベテランさんなんだ。
山道慣れればなんてことなくなるのか。

「誰もいない静かな山が好きだ」とか、「この山独り占め」とか言って、山ん中たったひとりでテント張って過ごす・・・人が今の自分にはとても信じられない。自分には山は向いてないかも。

1時間以上降りて、上高地に近づいてると思うとやっと余裕が出てきた。
すこし遅いが紅葉が残ってていい雰囲気だ。・・・ったんだ。

沢の音が聞こえはじめ、遠くの木の間に建物が見えてきたときはようやく安心できた。
山荘から1時間45分位で登山口の門に到着。初登山の感激というより、無事帰ってこれたことへの感激が強い。

外は舗装された道で観光客がぼちぼち歩いてる。またまたこのギャップ。

あとは、散策がてら河童橋までのんびり歩く。
途中、雲が切れた西穂独標(の方)を見上げて、あんなところまで登って降りてきたのかと思うと、やっと少し満足感がでてきた。

河童橋あたりは、景色が良くていいところだ。しかも携帯が繋がらないから、泊って滞在したら現実逃避(どんな?)できていいかも。
また来たいと思う。
このあと、天気が良くないのにたくさんいる観光客に混ざって、写真を撮りながらBTへ。
   

 


BTはあまり混んでなく、ちょうど待ってたバスに乗れて沢渡へ。
車で着替えそのまま自宅へ。

疲れただけ。


◎初登山の印象
・車に乗ったばかりのときは、また山に登ろうとは思わなかった。
・時間がたつと、
   「今日の山については」
山荘までの往復は「こんな思いまでして登りたくない」、だけど、山荘から独標までは「自分の状態が良ければまた来てもいいかな」ぐらいの印象。
平日、またこの道を一人で登ろうとは思わないが、誰かと一緒だったらいいかもしれない。
しかし、新穂高側から登った方がきっと楽しいだろう。

山歩き程度の普通の登山者にとっては大したことのないルートなんだろう。いい経験になったと思う。

   「ほかの山は」
体力的にきつくても、登山者が多い山ならまた登りに行ってみたい。楽しめるかも。





                                                      駄文失礼

2.西穂独標

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